『本』
想いという無形的な消耗を文字という有形的な黒い液体、固体で真っ白な紙に残している。
読み手はその工程から逆の順序でその想いを正解がない形で作り出していく。
真っ白な紙がなくなったとすれば?
文明の利器が発達している時代を生きていけてるおかげで、代わるものがある。
『電子書籍』
CDという媒体が好きでストリーミングサービスに未だに受け付けにくい感情を持っている音楽。
それなのに "電子書籍" というものは受け入れてしまう何とも不思議な自分の考えに気付いた。
もちろん、実際に本を手にとって読むことに取って代わる良さのものはない。
ふと本屋さんに立ち寄って、
漫画本や児童書から離れた物静かな棚を抽象的に眺めて、
惹かれたその有形的に組み立てられた消耗を手に取って、
特段な感情を抱かないその何気ない過程が思い返すとすごく好きなのがわかった。
ただ、その過程が省かれても、手に取った "もの" に惹かれた過去がある。
そしてまた、最近それが訪れた。
それも今回は正式な書籍ではなく、個人が書いている小さな一つの物語。
小学生が書く朝顔の成長日記のようなものだ。
その成長をより決め細やかに大人だからこそ書き記せる表現力と想いでまとめている。
音楽が心に響く感情と言い表す表面上の言葉は同じかもしれない。
ただ、胸に訴えかけて残るものには音楽とはまた違った、より純粋な物語があって、そこに心が入り込んで行った。
一個人の小さな恋愛物語ではあるんだけれど、これまで手に取ってきたものの中ですごくすごく綴られ方が綺麗だった。
(恋愛物語だと朝顔の例えはあまり例えになってなかったかもね、ごめんなさい)
書籍にならない、形にならない、そんな小さな物語にも拠り所が見つけられたこと。
価値の世界が広がる入り口にたどり着いたかな。
fin.