しふくのーと

誰も得しない日記

夜の中の太陽

 

 

 

 

『僕の心のヤバいやつ』

 

2018年3月8日に週刊少年チャンピオンで連載が始まった桜井のりおさん作の青春ラブコメ

 

"3月8日" "桜井さん" って聞くと どうしてもそっちの自分が反応する。

 

ある意味 "僕の心のヤバいやつ" なのかもね (え?)

 

そんなことはどうでもよくて、今年の2月にテレビアニメ化が発表され、4月から6月にかけて第1期が放送された。

 

作品の存在を知ったのは、テレビアニメ化の発表とともにオープニングテーマとしてヨルシカの『斜陽』が決定したときだった。

 

 

(今回は太宰治なのね)

(みすたーさんにも太宰治からとった同タイトルあるよね)

 

当時は楽曲に対して待ち遠しさも含めた感想を抱いた一方で、作品に対しては青春ラブコメのアニメなんだと軽く触れた程度。

(これで触れたと言うのも失礼なんだけど)

 

3月から4月にかけてお仕事が忙しい時期なのもあって、テレビアニメ化の発表以降、ほとんど情報を目にとめることなく、初めて視聴したのは2話が過ぎていた4月半ばの頃だった。

 

もちろん最初はヨルシカの音楽を聴く目的で。

 

 

 

「僕は頭がおかしい」

 

Starting Over の冒頭くらいパンチのある始まり。

 

でも "僕の心のヤバいやつ" なんてタイトルだしそれも納得。

 

 

殺戮の本を手にして妄想を繰り広げる中二病の主人公 市川京太郎。

 

 

市川が一番殺したいと思っているモデルもこなす美少女 山田杏奈。

 

そんな絵に描いたように相反する二人の関係の変化と心情の成長を描いた物語。

 

 

『「どこからが好きなんだろう」って距離感が全然わからない。相手の子をいつ好きになったのか、好きじゃなくて違う感情なのか。心の葛藤が起こる曖昧な感情が面白いんです。』

 

桜井のりおさんの描きたかったそれは、些細な感情の変化から表現されていて、その変化で少しずつ成長していく市川の姿が回を重ねるごとに楽しみになった。

 

一方、山田も図書室で出会った市川に関心を持ち始め、積極的にアプローチしていく中で、市川の不器用な気遣いゆえの反応に次第に心情の変化が生まれる。

 

「自分の感情に正直になれない」

「これが好きという感情なのか分からない」

「相手に嫌われるかもしれない」

 

分からないことがまだたくさんある成長期の中学生が、互いに手探りで、ときには恋の感情から勇気を出して思い切って一歩を踏み出し、自分の心を開いて向き合っていく。

 

 

 

「 尊 い 」

 

 

 

ただそれだけ。

 

 

好きになった瞬間はなく、好きだと気付いた瞬間が描かれているのがこの作品のキーポイントでもであって。

 

両片想いになってからは互いに不器用なこともあり、微妙なすれ違いや自分の気持ちが相手に上手く伝わらない瞬間が何度も訪れる。

 

そのたびに尊死を繰り返して、気が付けば単行本まで購入していた。

 

 

落ちて行くように茜が差したから

 

闇と陽が交わっていく夕方。

そんな夕方はまさに市川と山田の関係であり、斜陽が彼らの道を照らしている。

 

眩しくて仕方ない山田という太陽は、市川の手の届かない存在。

 

その存在が "高く成った葡萄" として表現され、イソップ物語の「酸っぱいブドウ」の内容がまさにこの物語とリンクしている。

 

しかし、それがわかっていても指先が触れたとき、燃えるように焦がれ、自分の感情に気付いた。

 

太陽も恋も焦がれるものであり、陽が落ちることにも、恋に落ちることにも理由なんてない。

 

叶わぬものだと決めつけていても心は正直だった。

 

 

もう少しで僕は僕を一つは愛せるのに

斜陽にはにかむ貴方が見えた

 

斜陽が照らす恋心に目が開かなかった冒頭から、最後には目を開けた先に貴方がいた。

 

自分の感情と向き合って成長し、恋という感情に気付いたからこそ目を開けることができて、その存在が見えた。

 

1年生の頃は嘘をついて学校を休んでいた市川が、2年生になって山田という存在に出会い、学校が嫌いでなくなったこと、自分の感情と向き合わせてくれたことにより、好きという感情に気付かせてくれたことに「ありがとう」という感謝を伝える第1期最終話での最後のシーン。

 

山田が照らしてくれた光 (山田への恋心) によって、卑屈な市川が自分自身の生き方を認めることができたラスサビの歌詞と、そう成長させてくれたことをきっかけとなった存在に伝えたい "僕は僕を知ってほしい" というタイトルが重ねて描かれていて本当に尊かった(死)

 

「好き」という恋心よりも「ありがとう」という感謝を先に伝えたのは、山田が今までの市川の卑屈な生き方を否定せず、その楽しさは誰のおかげでもなく、市川自身が学校に来て得たものだと肯定してくれたことが嬉しかったからじゃないかな。

 

 

 

第1期の放送は終わってしまったけれど、この2か月間で得られた幸せは少なくともあと半年は噛みしめて過ごしていける。

 

その味が終わる頃には第2期が始まるしね。

 

そのときにはきっと「好き」と伝えてるかも(尊死)

 


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("器用なだけの山田" こと 半沢ユリネ さんも登場します)

(見た目はクールでも中身は幼いめちゃんこ可愛い子です)

 

 

 

まだ見たことがないという方はぜひヨルシカの音楽とともにご視聴いただければ。

 

 

 

 

 

単行本はアニメ以上に尊い展開が進んでいるので、興味を持たれた方はぜひ最新刊まで読んでいただければ。

 

 

 

 

2023年初ブログはアニメになっちゃったね。

 

後半は斜陽の曲解説みたいになってたけど。

 

本当はヨルシカのライブレポになるはずだったんだけどね。

(※ツアーファイナルの沖縄公演が終わってから公開予定です)

 

 

改めてこんなにも素敵な作品に出会えて本当によかった。

 

お仕事が忙しかった4月もこのアニメ放送を糧に頑張ってこれたところもあって、メンタル的に凄く支えられた。

 

 

『音楽から出会う物語』

 

ヨルシカが好きだとそれが小説なことが多いけれど、アニメとの出会いにもまた新しい良さを見つけられた。

 

そんな作品に出会わせてくれたヨルシカに、そして作品全体としてだけでなく、一つひとつのシーンに尊い瞬間を描いてくれた作者の桜井さんに「ありがとう」という感謝を自分も伝えたかった。

 

このブログが少しでもその気持ちを代弁してくれてるといいな。

 

 


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fin.